意見書・パブリックコメントの取り組み


特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める意見書を提出しました。

特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める意見書
特定非営利活動法人 消費者ネット・しが
理事長 土井 裕明


現在,内閣府消費者委員会特定商取引法専門調査会において,事前拒否者への勧誘禁止制度を特定商取引法に導入すべきか否かについて,議論がなされている。そこで,当団体は,以下のとおり意見を表明する。


第1 意見の趣旨
 特定商取引法の改正にあたっては,勧誘を拒絶する意思をあらかじめ表明した者に対して訪問勧誘や電話勧誘を行ってはならないという制度を導入すべきである。

第2 意見の理由
 訪問販売や電話勧誘販売は,消費者が望むか否かにかかわらず,業者側が一方的に勧誘を開始する,いわゆる不招請勧誘による販売形態である。「消費者の訪問勧誘・電話勧誘・FAX勧誘に関する意識調査」(消費者庁平成27年5月)によれば,消費者の96%以上がこのような勧誘を望んでいない。にもかかわらず,この5年間に,消費者の27.9%が訪問勧誘を,70.2%が電話勧誘を受けた経験があるとされる。
 一方,国民生活センターが全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)に基づいてまとめたところによれば,2013年度の訪問販売に関する相談件数は約9万件,電話勧誘販売にかかる相談は約10万件に上る。訪問販売では,新聞をはじめとして強引な勧誘や長時間に及ぶ勧誘などの問題が多いとされ,電話勧誘販売では,高齢者に対する強引な健康食品の勧誘や,劇場型勧誘による金融商品の勧誘が目立つとされる。このように,不招請勧誘を端緒として,多数の消費者トラブル,消費者被害が発生しているのである。
消費者は,商品購入や,役務提供契約を希望するときは,いつでも自発的に店舗に赴いたり,通信販売を利用したりすることができる。消費者のほとんどが望んでいないのに,不招請勧誘を甘受しなければならない理由はない。
 現行の特定商取引法でも,契約を締結しない旨の意思を表示した者に対しては,再度の勧誘を行うことは禁止されている。一度勧誘を受けて,これを断ってからでなければ,再勧誘の禁止が適用されないというのは不合理である。あらかじめ,不招請勧誘を拒絶する意思を表示した消費者に対しては,一切の勧誘を禁止すればよいだけのことである。
 これに対して,訪問販売業界からは,営業の自由を過度に制限する規制であるとの反論がなされている。
 しかし,消費者には,生活の平穏を守る権利があり,勧誘を断る権利もある。消費者が不招請勧誘に耐えなければならない義務などない。訪問や電話による勧誘は,消費者がこれを自由な意思で受けいれる限りにおいてのみ許容すれば足りるはずである。
 一部の悪質業者と正常な営業を行っている業者とを同一視して過剰な規制をかけるべきではない,という議論も新聞業界を中心に展開されている。
 新聞という商品自体に問題があるわけではないとしても,その販売方法に大きな問題があることは,訪問販売の中で新聞関連の相談がもっとも多いことからも明らかである。
 特定商取引法3条の2を遵守して,販売目的で訪問をしていることをまず最初に告げ,勧誘を受けてもよいと表明した消費者のみに対して勧誘し,拒絶されたら直ちに退去して再勧誘はしないというルールを守っていれば,これほどセンターへの相談が多くなるはずはない。
 それができていないからこそ,苦情や相談が多いのであって,事業者は,自らが消費者の生活の平穏を害する勧誘方法をとっていることを,まず自覚すべきである。
不招請勧誘が多くの消費者被害の温床となってきたことは周知の事実である。事業者は,不招請勧誘をしなくとも消費者に支持される質のよい商品を開発する努力をすべきであって,不招請勧誘によって販路を拡大することに固執すべきではない。