意見書・パブリックコメントの取り組み

電気通信事業法等の一部を改正する法律の施行等に伴う電気通信事業の利用者保護に関する省令等の整備案についての意見書を提出しました。

 
電気通信事業法等の一部を改正する法律の施行等に伴う電気通信事業の利用者保護に関する省令等の整備案についての意見


【意見の趣旨】
改正省令案第22条の2の7第1項第5号で,移動体通信について「確認措置契約」を締結した場合に広く初期契約解除ルールの適用を除外することには反対である。

【意見の理由】

1 電気通信事業法改正の意義

本年5月の電気通信事業法改正では,利用者保護のためのルールとして,契約時の書面交付義務,初期契約解除制度の導入,不実告知の禁止,勧誘継続行為の禁止,代理店に対する指導等の措置などが規定された。
電気通信事業法が適用される契約については,特定商取引法の適用が除外されている。携帯電話契約や光通信回線の契約などにおいて,きわめて多くの苦情が発生していることに鑑みれば,今回の電気通信事業法改正で,こうした利用者保護の規定が置かれたことの意義は大きい。
とりわけ,十分な理解のないままに契約を急がされ,あとになって契約の解消を望むようなケースは後を絶たず,クーリングオフ制度に相当する初期契約解除制度が導入されたことの意味は大きい。

2 省令案の問題点

ところが,今回示された総務省令案では,携帯電話のような移動体通信について,この初期契約解除制度の適用を事実上除外することになっている。これでは,せっかくの法改正の意義が大きく損なわれてしまう。
すなわち,改正省令案第22条の2の7第1項第5号は,携帯電話等の移動体通信の契約において,「確認措置契約」を締結するという要件の下に法26条の3の初期契約解除の適用を除外することとしている。要するに,利用者が利用を開始したのち,電波状況(利用場所状況)がよくなかったという理由で契約を解除できるという特約があれば,初期契約解除ルールを適用しないというものである。
これは,いわゆる「お試しサービス」といった業界の自主的な初期契約解除特約があれば,初期契約解除ルールの適用を免除するということを意味する。

3 「お試しサービス」の問題点

「お試しサービス」は,事業者によってその内容がまちまちである。契約締結後に解除を認めるものもあれば,契約締結前に試験的に実機を試用するものもあるし,事前に申し込んだ場合にのみ解除権を留保できるものもある。また,いずれの事業者も,基本的には電波状態(利用場所状況)に問題があったときにだけ解除を認めるもののようである。
たしかに,このような自主的な初期契約解除特約が十分に機能すれば,使い始めてから電波の弱さが判明したというケースについては,一定の利用者保護の効果はあるかもしれない。
しかしながら,移動体通信について,利用者に初期契約解除を認める必要性があるのは,利用場所状況が悪かったという場合に限らない。移動体通信についての利用者からの苦情は,利用場所状況についてのものよりも,契約条件,提供条件に関するものの方が多くなっている。
携帯電話などの移動体通信は,料金体系が極めて複雑で,契約時の説明義務や書面交付義務があるからといって,容易に理解できるものではない。実際の料金体系が利用者の期待していたものと異なっていたというようなケースでも,利用者による初期契約解除を認める必要がある。
また,キャッシュバックなどの条件で強引に契約を誘引する販売方法も多く,契約後に思い直して解除できる途を広く残しておきべきである。
改正法の初期契約解除制度は,どのキャリアについても同じように適用できるようにすべきであるし,利用場所状況の問題にだけ対応すれば足りるというものでもない。

4 まとめ

法26条の3の初期契約解除は,移動体通信について広く初期契約解除を認め,利用者の保護を図ることを目的とした規定である。今回の省令案では,利用場所状況の問題以外の理由での初期契約解除は認められないのと同じことになる。利用場所状況の問題に限定して初期契約解除を認めるようなことは,省令を使って改正法の趣旨を没却するに等しい。
したがって,今回の省令を制定するにあたっては,いわゆる「お試しサービス」が提供されていることをもって,初期契約解除ルールの適用を除外するような条項を設けるべきではない。


以上