意見書・パブリックコメントの取り組み

消費者庁及び国民生活センターの徳島県への移転に反対する意見書を提出しました。

 
消費者庁及び国民生活センターの徳島県への移転に反対する意見書
 

【意見の趣旨】

 現在「まち・ひと・しごと創生本部」の「政府関係機関移転に関する有識者会議」において審議されている,消費者庁と国民生活センターを徳島県に移転する案に反対する。
 
【意見の理由】

1 消費者庁の地方移転について

 消費者問題は多数省庁の所管事項に広くまたがるという特徴がある。従来の消費者保護行政は省庁ごとの縦割りで行われてきたという反省の上に設置されたのが消費者委員会であり消費者庁である。消費者庁は,関係行政機関に対して,資料の提出や説明,その他消費者行政を遂行する上で必要な協力を求める(消費者庁及び消費者委員会設置法第5条)ものとされている。消費者庁は,複数の行政機関に対して,横断的に,司令塔的機能を発揮するという役割を与えられている。
 その消費者庁が,徳島に移転し,他の行政機関から離れてしまえば,どうしても,こうした司令塔機能は弱体化せざるを得ない。
 消費者の取引被害,食品安全や食品表示などの問題も数多くあり,こうした問題については,経済産業省,金融庁,厚生労働省,農林水産省などとの連携はとくに緊密に行う必要がある。これらの行政機関が東京に集中している現状で,消費者庁だけを遠方に移転してしまえば,消費者庁の機能は事実上著しく低下する。
 有識者会議も,「官邸と一体となり緊急対応を行う等の政府の危機管理業務を担う機関,中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関,移転すると機能の維持が極めて困難となるもの等の提案は検討対象としない」としている。消費者庁は,まさにこのような機関に該当する。消費者庁の地方移転は絶対に推進すべきではない。

2 国民生活センターの地方移転について

 国民生活センターは,消費者基本法第25条において「国及び地方公共団体の関係機関、消費者団体等と連携し、国民の消費生活に関する情報の収集及び提供、事業者と消費者との間に生じた苦情の処理のあつせん及び当該苦情に係る相談、事業者と消費者との間に生じた紛争の合意による解決、消費者からの苦情等に関する商品についての試験、検査等及び役務についての調査研究等、消費者に対する啓発及び教育等における中核的な機関として積極的な役割を果たす」ものとされている。
 過去には,消費者庁との統合も検討されたほど,両者は有機的に連携してそれぞれの課題に取り組んでいる。消費者庁を地方に移転することはもとより,国民生活センターを消費者庁と分離して遠方に移転させることは,両機関の連携を損なうおそれが強い。
 また,事業者の多くが東京に本拠を持っていることを考えると,消費者と事業者との間の紛争についてのADR機能は,国民生活センターが東京ないし首都圏に存在してこそ実効性を持ちうるのであり,徳島県に移転してしまっては,ADR機能が低下することが危惧される。
 さらに,かりに国民生活センターが徳島に移転するとなれば,そこで勤務すべき消費生活相談員を確保することも困難になるおそれがある。消費生活相談員は,高度の専門性を持ち,豊富な実務経験に裏付けられた専門職である。国民生活センターが地方に移転する場合には,相談員の人員確保の問題も生ずる。

3 まとめ

 中央省庁には,地方に移転しても大きな弊害がないと思われるものもあれば,機能が弱体化するおそれのあるものもあるであろう。
 少なくとも,消費者庁と国民生活センターに関していえば,機能が弱体化するという弊害が大きいことは明らかであり,徳島県への移転は見送るべきである。